まるで江戸時代にタイムスリップ!?「大内宿」をご存知でしょうか
福島県には、茅葺屋根の民家が街道沿いに立ち並ぶ、江戸時代の宿場町の保存地区として「大内宿」という場所があります。
ここは新たに観光資源として作られたのではなく、江戸時代に会津若松市と日光今市を結ぶ重要な道の宿場町として栄えました。その場所が、現在も江戸時代の面影そのままに茅葺屋根の民家が街道沿いに建ち並び、この景観を引き継ぐために店舗兼住居として生活しており、昭和56年には国選定重要伝統的建造物群保存地区に指定されました。
この大切な村・宿場の景観を未来の子供たちに引き継いで行くために、住民憲章も作られています。それは「売らない・貸さない・壊さない」という3原則。
住民憲章「売らない・貸さない・壊さない」
この住民憲章にはどのような意味合いがあるのでしょうか。
「売らない」は、少子高齢化・人口減少が進んでいる中で最も難しいことかもしれません。ただ、そういった事態に巻き込まれた時には、自治体や組合が膝を突き合わせてどうするべきかをしっかりと話し合えるような体制ができていることでしょう。
「壊さない」は、シンプルですね。この景観を守る上で、特に必要な事柄です。何理由をつけて壊してしまうと、景観全体が壊れてしまうことになります。
対して最後の「貸さない」は、非常に複雑な状況になっています。というのも、民泊が主流となっている今だと「古民家宿泊ツアー」なんてものはとても有意義な取り組みのように感じます。なので、そこに疑問を抱くところも出てきそうですが、住民一人一人としっかり対話して作り上げたという背景があることがわかります。
このように住民一人一人が一丸となって景観の保存をするために伝統的な屋根葺きの技術習得、継承に全員で取り取んでいるのです。もちろん、時代の流れとともに打開策についても様々な話し合いが進められていることでしょう。
合掌造りで有名な白川郷では、同じ3原則を掲げながら一部の緩和策として以下のような方針を固めていました。
所有者に貸し付け希望がある物件の優先順位は、 ①荻町区内の希望者、②村内の希望者、③村外の希望者の順とし、活用と管理を図ることもやむを得 ないと考える。加えて、次の居住条件「伝建物が文化財であることや荻町全体が保存地区であること を理解し善良に責任を持って維持管理ができる人、火に弱い建物であり常駐して管理ができる人、地 域の諸行事や出事に率先して参画し同じ住民として地域に貢献できる人」を満たす人とする。
しっかりと文化保存と向き合っていこうという心意気が伝わってきますね。
「大内」の由来とは?
大泉洋の化粧姿で話題になったことで記憶に残っている人も多いでしょう。NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」にも登場する、後白河天皇の第二皇子の高倉宮以仁王(たかくら みやもちひとおう)。彼は、平清盛全盛期の治承四年(一一八〇年)、源頼政のすすめで諸国にいる源氏と延暦寺の反平家勢をあてに挙兵をしましたが、この計画は予想より早く平家側に発覚し、同年六月二十四日、京都宇治川で合戦となりました。
その合戦において源頼政は討ち死にし、高倉宮は行方不明。 また、流れ矢にあたって戦死したとも言われ、伝説はここから始まりました。そして、伝説はロマンを秘めた歴史的背景と、伝承遺跡などと共に村人に深く根付いて語り伝えられています。
伝説によれば宇治川で敗れた宮は、奈良路から近江(滋賀県) 東海道・甲斐 (山梨県) 信濃(長野県) 上州沼田(群 馬県沼田市)尾瀬(群馬県利根郡) 檜枝岐・伊南・大内・只見を通って越後 (新潟県)入り、小川荘中山村(東蒲原 郡上川村)で死去されたことになっています。
宮は二十人ほどの供を連れて、越後国に住む小国右馬頭頼之を頼りに落ちのびてきて、大内に立ち寄り、この里が都の風情に良く似ている所から、それまで山本村と呼ばれていたものを大内村と改められたというものです。
「藁葺き屋根」の保存活動
約400年の歳月を経ても残る伝統的な茅葺き屋根。これは村の人々が自ら保存活動を行うことによって維持されています。
専門技術を持つ茅手(かやて)と呼ばれる職人を中心に、ほとんどの村の人々が協力し合い屋根の葺き替えに取り組まれています。テレビの特集などでみたことある人もいるかもしれませんね。
茅葺き屋根の材料はススキです。夏は涼しく冬は暖かい茅葺き屋根ですが、火災には弱く一度燃えるとすぐに広まってしまいます。そこで大内宿では、9月1日に毎年一斉放水を行っており、1年に1度、各民家から高く水が飛び交う様子を多くの方が見物に訪れます。
二度見は必至!名物「ねぎそば」
二度見しましたか?
薬味のネギをお箸代わりに使って、蕎麦をたぐり寄せて頂くという見た目も食べ方も大変ユニークな郷土料理です。
辛味大根を絞った汁を使用しており、「高遠そば」と呼ばれ大人気メニューとなっています。
歴史の息吹を感じられ、そして記憶に刻まれるであろう大内宿、一度は足を運んでみてくださいね。